2007年11月28日水曜日

マルセル・モース『贈与論』

モースは原始社会の贈与の慣行を詳しく考察しながら、古代社会や原始社会で機能しているもっと別の原則を探りだす。モースは文化人類学のさまざまな調査を網羅的に調べながら、こうした社会では、貨幣を使った交換の原則ではおさまらない慣行が多数存在すること、なかでも贈与が経済的な領域をこえた重要な原則として機能していることを明らかにするのである。

こうした贈与は、マリノフスキーが探りだしたように、生を組織し、贈与されたものをもつ人々の生活の楽しみとまでなるものであり、生活必需品や嗜好品の交換と考えてはならないのである。宝は交換されることでますます価値が高くなり、それを贈与するひとの地位を高める。

モースはこの慣行をいわゆる経済的な領域だけでなく、神話学、法学、政治学、道徳学などのさまざまな分野に探ってゆく。そこで新たにみえてくるつながりの幅はおおきい。チムアシン族の「かわうその子」の伝説(129-130)は、客の招待の決まりを提示することともに、人間と動物との深いつながりを示すものとなっている。神話と社会の規範が一体となって機能していることをよく示している。

http://polylogos.org/books/mauss11.html

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