2008年10月28日火曜日

アイスランド、国家破産の危機


http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/76



アイスランド、国家破産の危機
銀行救済を巡る厳しい選択
2008年10月09日(Thu) Financial Times

普通は、まず国の経済を考慮し、次に銀行システムの普通は、まず国の経済を考慮し、次に銀行システムの健全性について考えるものだ。だが、人口31万9000人の小国アイスランドでは、通常の論理が逆転する。アイスランドは言ってみれば、小さな国が付随したかなり大きな銀行システムなのだ

 国内の大手銀行が破綻したり、深刻な状態に陥っている今、アイスランドの危機は軽視できない。今週、ゲイル・ハーデ首相が警鐘を鳴らしたのも当然だ。「アイスランドの経済が銀行もろとも波に呑まれ、国が破産する危険性が現実にある」と。

 同国には選択肢がある。納税者に巨額の負担を強いて銀行を救済するか、または銀行の破綻を容認し、各行の債権者に多額の損失を負わせるか、だ。アイスランド中央銀行によると、同国の銀行が外国から借り入れている負債は、今年第2四半期に直近1年間のGDP(国内総生産)の6倍の水準まで積み上がっている。

 単純計算すると、納税者が同国銀行システムの対外債務を1%肩代わりするごとに、GDPの6%相当のカネが納税者の負担となるわけだ。これはあまりに不快な試算であり、ハーデ首相は今週、「国家の利害は個々の銀行の利害よりも大きい」との考えを表明した。

 そうなると、ほぼ間違いなく言えるのは、アイスランド当局が巨費を投じて銀行システムの機能回復を図る一方、アイスランドの銀行が破格の安値で資産売却を急ぎ、財務状況を洗い直す過程で外国の債権者にも損失が発生するということだ。

 アイスランド経済はその他諸国にとってはどうでもいい存在だ。しかし、同国の銀行にカネをつぎ込んだ人々――アイスランドの銀行の対外債務は800億ドルに上る――にとっては相当大きな損失を生む恐れがある。通貨クローナの下落でアイスランドの支払い能力がさらに低下すれば、なおのこと損失は膨らむ。

 アイスランドにとって、事態は深刻だ。これは典型的な新興市場の危機――アルミ産業の活況という本物の好材料を受け、資本が流入、経済が急拡大し、消費者が買い物に走り、貿易赤字が膨らみ、通貨が急落し、資本逃避のさなかに危機が起きた――は、銀行の野心的な攻勢で大きく膨らんだ物語だ。

 今にしてみると、アイスランドの経済は「難しい転換点を迎えている」とした9月半ばの国際通貨基金(IMF)の分析は控えめ過ぎた。IMFの専門チームは既に首都レイキャビク入りしており、IMFが近く支援を要請されても何ら驚くに当たらない。十分な外貨準備がなく、多額の貿易赤字が続くアイスランドの事情を考慮すると、政府が海外から資金を借り入れるのはほぼ不可能だ。

 IMFとしては、「アイスランド経済の長期展望は依然、羨望の対象になり得るほど有望だ」と分析した以上、資金援助の要請を拒むのは難しい。となると、一番あり得る将来展望は、悲惨な経済収縮と再編を経て、ゆっくりと持続可能な経済成長と責任ある銀行システムを取り戻す――という筋書きだろう。

 これはあくまで楽観的なシナリオだ。目先はバークレイズ・キャピタルのジュリアン・キャロウ氏が言うように、「アイスランドは過剰信用が経済を崩壊させた典型例として歴史に刻まれることになる」のだ。

By Chris Giles in London
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